はんの大岡印房 大岡印房
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実印
多くの人が、成人あるいは就職を機会に印鑑登録をするのではないでしょうか。この時から、登録された印章、つまり実印がその人の自己証明の道具となります。
家を借りる時。ローンを組む時。婚姻届。子供の出生届。人生の節目になる機会には、実印を使うのが一般的。実印の重要性が、よく分かるでしょう。実印を押すことは、自分の権利の確認であり、同時に社会的責任を明確に引き受けることでもあります。
実印は、簡単に模倣されるような品では困ります。唯一性を守るためにも、模倣しにくい手彫りの品を選ぶことをお勧めします。
銀行印・認印
銀行印は通帳とともに、大切な財産管理の役を担うもの。認印は手軽な日常の道具。両者の役割に応じて、使い分けるようにしましょう。
法人印
個人が印鑑登録をするように、法人も代表印を法務局に登録しなければなりません。印鑑証明書が発行されるのも、個人の場合と同じです。このように、登録制度や役割がほぼ同じなため、法人の代表印も個人の場合にならって、一般に実印と呼んでいます。
この代表印に、銀行印、角印、割印を加えた四本を、法人印といいます。一般的に印章店では、この四本にさらに小切手用のゴム印を加えて、セット販売しています。
企業の社会的活動は、個人よりはるかに広い範囲に及ぶだけに、法人印の責任は重大です。印材も彫りも十分に吟味して、高品質のものを揃えることをおすすめします。
落款印
墨痕鮮やかな書。見事な作品を締めくくるのは、左下に押された、これまた鮮やかな朱の印---
いかに見事な書でも、この落款印が貧弱では、すべてぶちこわしです。画竜点睛という言葉が、これほどぴったりの例は他にありません。落款印は単なる作者のサインではなく、それ自体が芸術作品です。朱と白が織りなす方寸の美が、書家や画家の情熱をかきたてるもの。押された印影は、ひとつの篆刻作品なのです。雅号を考え、印材にこだわる。落款印の世界に優雅に遊ぶ芸術家たちの姿が、朱の印影を通して見えるようです。
中国の古い書画を見ると、落款以外にも画面全体にさまざまな印が押してあることがあります。これは、所有者が「自分のものだ」という宣言のために押す印で、いわば、名品を所蔵したプライドの象徴なのです。所有者が代わるたびに押されるので、どんどん増えていきます。これらの印は、鑑蔵印とよばれています。
落款印に使われる印材は、青田石や寿山石が一般的で、手に入れやすいのですが、最高級品は、中国で産出する田黄石や鶏血石などの名石です。その気品あふれる美しさは、誰でも一度は手にしたくなるものですが、現在では良質のものは掘りつくされ、稀少価値になっています。

○姓名印:朱地に白で文字が入る(白文)。雅号印の上に押す。
○雅号印:白地に朱で文字が入る(朱文)。姓名印の下に押す。
○引首印:作品の右上に押す。座右の銘や好きな詩句などを彫るのが一般的。関防印ともいう。
蔵書印
本を愛する人にとって、他人に本を貸すのは勇気がいる行為です。貸した本が、なかなか返ってこないことが多いのもその理由でしょう。蔵書印は、蔵書に新たに一冊が加わった喜びを表すとともに、その本が本来所属している場所を宣言しているもの。そこには「返却をお忘れなく」という、所有者のメッセージも込められているのです。
この思いは洋の東西を問わず、西欧では書票が広く流布しています。表紙の裏や扉に貼る紙の小片で、蔵書印と同じく所有者を表しています。独自に作った凝った図柄や色彩が使われ、それ自体がひとつの美術分野になっていることは、印章と同じです。現存する最も古い書票は、十五世紀のドイツの神父さんのもので、図柄はハリネズミ。「どうか、私の蔵書を大切にしていただきたい」という神父さんの気持ちが、よく表れているでしょう。当時、本は今とは比べものにならないほど価値があったのです。
日本最古の蔵書印ははるかに古くて、八世紀、光明皇后の蔵書印とされるものが、正倉院に残っています。

蔵書印は、石材の他につげもよく使われる。姓の後に「蔵書」「図書」「図書記」などの文字を入れるのが一般的だ。
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